記憶のイガイガ /「エターナル・サンシャイン」
まず、カメラがそそらないのだ。
官能的でもロマンティックでもなく、
疾走感もなければ優美さもなく、
息苦しいような緊密さもないし、せっかく冬の海や凍りついた川を登場させながら冷たい風が吹き込んでくるような空気感・開放感もない。
ゾクゾクするような新しいカメラアイも、懐かしいタッチもない。
脚本と演出もあまりそそらない。
“時制”を上手く扱った映画(『市民ケーン』『パルプ・フィクション』など)は好きだけど、この作品は小器用にまとめていて驚きやダイナミズムに欠ける。
セットを最大限に生かしたスタイルはなかなかいいのだけれど。
才子才に溺れるというが、カウフマンの脚本には今回は溺れるほどの才も感じられず。「天才」でなく「才子」だからだなぁ、結局は。
こうなると作品のチャームは俳優にかかってくるわけだが、彼らにもそそられない。
もさっと垢抜けないのがジム・キャリーとケイト・ウィンスレットの持ち味とはいえ、主役のどちらかにもう少し軽やかな華が欲しかった。
あまりにも好きだったから辛い、その記憶を消したい、いややっぱり消さないで…という気持ちはとてもとてもわかるのだが。
記憶を消せず、記憶に責められて、瀕死の状態のまま「生きていればきっとまた会える」(希望と呼ぶにはあまりにささやかな、でも強い希望)とつぶやくウォン・カーウァイ映画の方に、私はずっと力づけられる。
(2005 4/7)
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