アメリカン・ドリーム30年史 /「ロッキー・ザ・ファイナル」

※先行上映で鑑賞

『ロッキー』って、実は地味に丁寧に描かれた良質な青春映画なのですよね。
その第一作のタッチとスピリットに立ち返った、愛すべき“ラスト・ソング”です。

当時を思わせるザラッと粒子の粗いカメラ、数々の名シーンやアイテムが再現されていますが、単なる「懐メロ」になる手前で何とか踏み留まっているのはスタローンの賢さでしょう(しかしフィラデルフィアミュージアムの階段のシーンは今でも高揚するなー)。


とはいえ1作目の引き締まったリズムに比べると弛緩した感じは否めません。息子との確執に加えて、マリー&彼女の息子との「擬似家族」ストーリーまで盛り込んじゃったものだから両方が中途半端で表面的になってしまったし、皆が最初からロッキー頑張れモードというのもつまらなくて、「過去の栄光を忘れられない哀れなオジサンとして嘲笑されていたのが次第に周囲を味方につけていく」という古典的ドラマツルギーに則った方がよかったのに…とかとか、ツッコミどころはそりゃあ幾らもある訳です。

訳ですが。
いやもう、この映画に関してはそんなことを言うのは不粋だ!と思わせる圧倒的な“ブランド”なんですね、『ロッキー』というのは。


で、『ロッキー』シリーズは作品の質という点では1作目と『ファイナル』さえ見ればいいんだけど、1作目の栄光を自ら食いつぶしていくようなダメダメな続編たちがあったからこそ、このファイナルが生きるしジーンとくるのもまた事実。あの30年間の駄作群もロッキー=スタローンの晴れやかな晩節のための長い道のり、「必然」だったというべきか。人生って難しくも面白いわ…。

ラストシーンの観客への“ご挨拶”ではホロリ。


なんかもう、スタローン自身の引退作品のような趣き。しかしこのままロッキーとともに本当に引退してしまえば“美しい伝説”になるところを、次は『ランボー4』をやるというのもスゴイ。業が深いというか几帳面というかこれぞ役者魂というかロッキー魂というか。こういうオジサン結構好きですよ、私。


※言うまでもないけれど、『1』を見て復習してからご覧下さいまし。