キレそうな僕の弁護士ライフ /「ジャスティス」

アル・パチーノ若き日の、傑作になりそうな匂いを漂わせながらなり損ねてしまった作品。

ジャケットの印象から正統派法廷サスペンスを予想しているとかなり裏切られる。弁護士版『ER』というか、熱血弁護士青春記…なのです(フジテレビ月9枠でやったら当るかも)。


重いエピソードをスピーディーに飄々と繋げていく感じはP・T・アンダーソンを彷彿させたり、ほろ苦ユーモアの散りばめ方はウディ・アレンぽかったり。 だけど狙いがことごとく的のひと回りぐらい外に着地していて、上滑り、空回り、肩すかしの連続で笑いが途中でフェイドアウトしてしまう。敢えて外してる訳でもなさそうだ。

それでいて、そのモヤモヤがまた妙に後を引いていつまでも気になってしまう映画ではある。ちょっと駄目でちょっと癖のあるオトコに惹かれてしまう女心?のように。


「アクの強い役コレクター」みたいなパチーノが好青年役という点でも異色の作品。なんたって、おじいちゃん子で人権派弁護士なんだから。しかも意外とはまっている。野暮めのスーツを着た美形のパチーノが、依頼人に振り回されながら奮闘する姿はなかなか可愛くてキュンとくる。

いつもよりずっと抑え気味にナチュラルに好演しているのに、そこはパチーノ、終盤の弁論シーンでやっぱりやっちゃったね。芝居大きすぎ。 この十数年後の『セント・オブ・ウーマン』では逆に、困惑するほどクサイ芝居を展開しながらも最後の演説シーンでは見事にいい感じの演技で締めてくれるのだが。


ボケ気味で孫自慢の優しいおじいちゃん役リー・ストラスバーグ(パチーノの演技の師ですね)、気骨ある判事なのに自殺マニアのジャック・ウォーデン、この2人が散漫になりがちな話のスパイスとして効いている。


汚点は恋人役クリスティン・ラーティ。英国王室の女性たち(ダイアナやカミラやケイト。女王様除く)を思い出させる容姿。いかつくて大味で…どうにかしてください。


ELLE JAPONのサイトの「ゲイに人気のセレブ」でパチーノ健闘。

http://www.elle.co.jp/home/fashion/celeb/07_0417/