ラン・ジャマール・ラン! / 「スラムドッグ$ミリオネア」
現時点では、今年見た映画のベスト。
子供たちとともに疾走するカメラ、
カオティックなインドの光景、
巧みな構成の脚本の芯にある、瑞々しさと強度を兼ね備えたシンプルな物語、
鮮烈な作品だ。
「運命」(Destiny/It is written)という言葉がキーワードとして何度も登場する。
降りかかってくる悪意や不運を従容として受け入れて生きていく(しかない)者達がいる。
主人公の少年ジャマールも「運命だから」と口にするが、彼の語るそれはおそらく「自分が信じた運命」であり、過酷な日々の中で、唯一揺らぐことなく信じるに値するその運命を全うするために走り続ける。
『グラントリノ』では叩き上げの“老兵”ウォルト(クリント・イーストウッド)が隣家の少年にそうしたように、この映画では兄サリームが弟ジャマールに生き残る術を教え、さらにある行為によって災厄を自らが引き受ける。
機転とタフな現実主義を頼りに、生きるために生きてきたサリーム(自分の足元だけを見、自分のルールやスタイルだけを信じて生きてきたウォルト)が、未来を信じることが出来る者、明日を思い描いて生きることが可能な存在に希望をリレーするのだ。
希望を託されたジャマールには、『ダーティーハリー4』の名台詞のような瞬間が訪れる。
「Go ahead,Make my day」
(山田宏一の名訳=「さあ来い、この日が来るのを待ってたぜ」)
インドの“みのもんた”(アニル・カプール。ジャンカルロ・ジャンニーニに似ている)もなかなか面白い造型で、凄みと華があって適役。
※長男は全てを引き受け、次男はサバイバルする…のだな。長男はつらいね。
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