お父さんモノ映画としては悪くない /「グエムル」

2004年に見た映画でベストだったのがポン・ジュノの『殺人の追憶』。はがゆい宙吊り感の、“気持ち悪さが気持ちいい”傑作だった(これとパク・チャヌクの『親切なクムジャさん』が私の韓国映画2トップ)。


彼の新作ということで期待MAXで見たのだけれど…もうひとつでした。


色んな人が色んなところで書いていることども=アメリカVS韓国(あるいはイラク北朝鮮パレスチナ)の戯画であるとか、浦沢直樹20世紀少年』の影響とか、ポール・バーホーベン入ってるとか、ここぞという所で敢えて“はずし”てみせるスタイルとか、監督の語る「極限でも人は笑う」とか…それらはみんな「そうよね」ではあるんだけど。

殺人の追憶』に比べると笑いもサスペンスも意図的でやり過ぎ(やらなさ過ぎ=微妙で笑えないという感想も多く目にしますが)。大好きな役者ソン・ガンホもいつもよりやや「過ぎ」てる感じ。


それでも、土砂降りの中ガンホと父親が切迫した目で無言で語りあう唐突にかっこいい(?)シーンとか、奇妙で暖かい家族全員集合の「晩餐」とか、火炎瓶攻撃とか、ラストシーンとか、忘れがたい絵は幾つもある。

一番好きなのは、ガンホが学校から帰ってきた娘の後ろをついて歩きながら、重そうなリュックを下からちょっと持ち上げてやるところ。彼のアドリブにせよ演出にせよ、あれは素晴らしいですよ、もー。


殺人の追憶』のお公家さん顔の容疑者役が強烈だったパク・ヘイルが全く異なるタイプを演じていて意外なまでの良さ。追われる身になった家族の中で唯一ニュースで取り上げてもらえない彼に、妹があっさり「特徴がないからよ」と言い放つシーン、あそこで、『殺人〜』の「普通の人だったわ」を思い出す人は思い出すでしょう。


パク・ヘイルが携帯会社から脱出するくだりやペ・ドゥナが巨大な鉄橋の上を走っていくシーンを見て(どちらもさらりと描かれているが)、ポン・ジュノって普通にアクション映画を撮ってもイケるんじゃないか?と思った。
(2006 9/18)