大人になった。映画になった。 /「インサイド・マン」

スパイク・リーは(オリバー・ストーンも)「映画を撮るのでなく“テーマ”を撮る監督」という感じで嫌いだった。
でもこの作品で印象修正。ちゃんと「映画を撮って」いるじゃないか。

ここのところめっきり「スパイクといえばジョーンズ」みたいな流れになっていたが、ジョーンズ(と元妻ソフィア・コッポラ)の小賢しいアート系「キッズ」ムービーより彼の方がやはり映画監督の資質なんじゃないかな。


というわけで、いい意味で大人な、なかなか小気味良いクライムムービー。『ユージュアル・サスペクツ』あたりが好きな人にはお薦め。


淡々とした映像ながら疾走感に溢れた引き締まったオープニングはカサヴェテスの『グロリア』を彷彿させる。 …誉めすぎだな。
中盤から演出と脚本の手綱が緩んでくるのが惜しいが、役者たちのアンサンブルが見事なので持ちこたえる。


アビエイター』ではあまりにもチョイ役だったウィレム・デフォーが復活、見せ場の無い役なのに主役陣を凌駕する存在感を放つ。
ジョディ・フォスターは「高圧的なエリート・ビッチ」専門女優になってしまったんだろうか。適役だが、『羊たちの沈黙』での張り詰めた健気さが懐かしい。
『キンキー・ブーツ』で魅惑の大主役だったキウェテル・イジョホーはとても普通に「主役刑事の相棒」を演じていて別人のよう。彼には今後も注目だ。
残念なのは肝心の「インサイドマン」クライブ・オーウェン。殆ど覆面姿だからこそ、もっと華や凄みが無いとね。


オープニングの曲=A・R・ラフマーンの『チャイヤ・チャイヤ』は実は我が思い出の曲(昨日題名を知りました)。6年ぶりに突然耳に飛び込んできて鳥肌が立った。2000年にインドやアフリカに行った時に大流行していた曲で、当時はコミカルな曲だと思っていたのだが、いやー、かっこいい曲だったんだな。
(2006 10/23)