重慶マンションから遠く離れて /「2046」

一人の女の記憶に囚われて、ゆるやかに自殺していく男の物語である。

「哀しみの男」という美しい形容詞で語られるトニー・レオンは、ワタシ流に言えば「(二枚目で主役なのに)いつもしてやられる男」だ。

そんなツイテない男の顔と佇まい、一人の映画俳優の特権的存在感が『2046』という映画を支え、物語を支え、輝かせている。

カーウァイにしては冗長な構成も、クリストファー・ドイルにしては“手馴れた美しさ”を感じさせてしまうカメラワークも、結局“例のキムタク”でしかないキムタクも、むしろ無くてもよかったような劇中劇も、トニー・レオン演じるカーウァイ映画ということで万事OK!になってしまう(いわゆるスター映画という意味ではなく、だ)。

すれ違う恋人たちを描き続けてきたカーウァイ作品だが、『恋する惑星』『天使の涙』の疾走感とさらさらしたリリシズムは『2046』には無く、深い深い深い悲しみが静かに強く豪奢に描かれる。

あまりにも悲しいので、カーウァイ映画を時系列で(遡って)再見したくなった。

※『花様年華』同様、チャイナ服と赤い口紅&ネイルの女優たちが艶やか!
(2004 11/3)

2046 [DVD]

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