タフガイはいつもおセンチ /「ミリオンダラー・ベイビー」

ボクシング映画ではなく、“父(たち)と娘”の物語。
映画作家イーストウッド」の非ハリウッド的な容赦無い冷徹さと、「男クリント」の優しさが紡ぎだす、厳しくて美しい映画である。Tough ain't enough という言葉が全てを語っている。


イーストウッドは監督デビュー作『恐怖のメロディ』から長い時を経てやっと、“自分の闘いは自分でやる”二人目の女を生みだした。そして『恐怖〜』では追ってくるその女(文字通りのストーカー、妄想に憑かれた殺人鬼)からひたすら逃げていた彼が、この映画で初めて女を正面から受け止めたのだ。無駄に70年以上男をやってませんでしたね。


ヒラリー・スワンクモーガン・フリーマンもいいが、これはやはりイーストウッドの佇まいと面構えを堪能する映画だと思った。背中のあたりに隠しようのない老いを感じてちょっと寂しくなってしまったのだが、その老いもコミで素晴らしい役者ぶり、男ぶり、サバイバーぶりだ。


惜しむらくは。イーストウッドの作る音楽はいつもおセンチすぎる!ということ。
(2005 6/1)

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]

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